世界初の「ラムハクセ」に昔ながらの伝統的な食べ方は存在しません。
運動量の多い前脚スネ肉に宿る、生命の力強さ。そこに、長く受け継がれてきた燻製という技術が重なり、時間と手間をかけて“旨味”へと昇華されます。この旨味を感じるという体験は何物にも代えがたい。口にした事がなければ当然分かりませんが、口にした者だけが分かる静かな説得力。
この部位と製法から美味しさの先にある「意味」を体験する。それが、このラムハクセの本当の価値なのです。
この豊潤な香りを纏った骨付きスネ肉の燻製を、まずはどうやって食べてやろうか?頭の中でシュミレーションするだけで、幾つかの方法が思い浮かんだはずです。

まずは、表面を薄く削ぎ取ったその一片を感じる。立ちのぼる香りは、どこか懐かしく、それでいて新しい。最も煙を浴びた表面の香ばしさと、少々の脂を口に運べば、舌の上でゆっくりと、じんわりと溶け、旨味が、ゆっくりと広がります。骨付きスネ肉だけが持つ特徴の一つでもある、表面に薄く張っている筋膜は煮込めばゼラチン質へと変わるもの。その筋膜は燻され、水分が抜ける事で凝縮され、なんとも言えない香ばしさと歯ごたえを与えてくれます。
【Tips】スネ肉とは言え中心はしっとり仕上がっていますので、薄くスライスしてそのまま楽しむのも良し、サンドイッチなどに挟むのも良し。コクのあるクラフトビールやウィスキーの友としてもどうぞ。
温もりを戻すたび、深く漂う香り(ブロックのままで) |

低く、静かな火を添えるだけ。骨のまわりに眠っていた香りが、ふわりと目を覚まし、煙と脂の余韻が、あたりに優しく立ちのぼる。過分な火入れは、素材の声をかき消してしまう。この肉は、すでに時間と技の手を受けて完成されたもの。ただ温もりを戻すだけで、充分にその力を放つ。骨付きのまま供されたラムセクハ、映る姿は凛として、食卓に物語を添える。冷たいままのそれとは異なり、舌の上で、香りと旨味が静かに花ひらく。温もりを戻すたび、深く漂う香り。それは、火と時間が育てたものにしかない、優しさ。
【Tips】筋肉たんぱく質(ミオシン)は40度以上で凝固し始めますので、再加熱する際は「ほのかに暖かい」程度で温めて下さい。真空パックの状態で50度程度のお湯に10〜15分くらいが適当です。その後、表面をバーナーで炙るなどすると香ばしく仕上がります。

骨のまわりに寄り添っていた肉を、そっと外す。
そこには熟した旨味と香りが、ほどけるように待っている。どんな構造になっているのか?どんな場所に筋があるのか?どんな形の骨なのか興味深く探る。同じ脛でも箇所によって味わいや歯ごたえが違うのか?そんな事を考えながら、興味がある箇所を仲間と分かち合う。
スライスして、余韻をひと切れずつ。ほぐして、パンに挟み、旅に連れていく。サラダの上に舞わせれば、ひと皿が語り出す。骨を離れたあとの味わいも切り分けるたびに表情を変え、どこまでも寄り添い、どこまでも贅沢だ。
【Tips】保湿する為の添加物は使用しておりませんので、時間が経てば段々と肉は乾いてきます。食べきれなかった場合はしっかりラップに包み数日のうちにお召し上がり下さい。また骨や太い筋、表面に付いた多めの脂などは全て美味し出汁になりますので捨てずにご活用下さい。肉片などはチャーハンにしても美味しいです。

骨・筋・脂、それは「余り」ではなく、余韻です。スモークの香りと旨味が染み込んだそれらは、二度目の物語を紡ぐ素材。火と煙が染み込んだ骨や脂は、鍋の中でふたたび語り出す。コトコトと音を立てて、一皿を支えた“記憶”が、あたらしい滋味へと姿を変える。
【Tips】骨の奥に宿る香りと旨味は、もう一度、食卓を豊かにする力を持っています。時間とともにゆっくり煮出したブロスは、あらゆる料理に奥行きを与え、「食べ終えたあとの愉しみ」までも、丁寧に仕立ててくれます。
透明感のあるスモークブロスには塩だけでも旨いし、ミネストローネやオニオンスープのベースにすれば野菜や炒め玉ねぎの甘みを、スモークのコクがしっかりと受け止めてくれます。パスタやリゾットのブロスとして少量のパルメザンを加えれば、深みとまろやかさが溶け合い、それはもう、“スモークラムのパエリア”として一皿の主役に。
必要なのは、少しの工夫と、ほんの少しの時間だけ。「食べたあとの素材までも味わい尽くす」それは、真に贅沢な楽しみ方と言えるでしょう。ただ、この1本の骨から採れるブロスは僅かです。少な目の湯で、凝縮した旨味を頂きましょう。
※元々塩味が付いているので塩は控えめに(仕上げで調整) 、骨は可能であれば鉈やノコギリなどで割った方が出汁がでます。 予めブロスを採る事を前提とするのであれば、少し多めに肉を骨に付けておいてやるのも一興です。
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